《来客・共創エリア設計|amana》「これまで」を知り、「これから」を創る。DNA WALLに刻まれた野村不動産の意思|ほぼ100のこばなし

濱谷俊輔さん(株式会社アマナ)×徳長政輝さん(コーポレートコミュニケーション部)×水谷光さん(グループオフィス戦略室)×長利琢磨さん(株式会社アマナ)

2026.03.31

《来客・共創エリア設計|amana》
「これまで」を知り、「これから」を創る。
DNA WALLに刻まれた野村不動産の意思

INTRODUCTION

野村不動産グループがこれまでに築き上げてきた約70年におよぶ歴史と事業の軌跡。新本社への移転を機に、それらを1つの場所に集約し、これからのイノベーションや共創を生み出す原動力として活用できないか。そんな発想から誕生したのが、14階に設置されたDNA WALLです。

大型ディスプレイ6台を並べたメインモニター(約165インチ相当)を中心に、4台のサブモニターが配置された空間。そこでは、野村不動産グループのこれまでの歩みや事業の広がりを体感できると共に、新たな気づきや創造的な着想を促す空間として設計されています。どのようにしてこのDNA WALLを形作っていったのか、株式会社アマナの濱谷俊輔さんと長利琢磨さん、野村不動産 グループオフィス戦略室推進課課長の水谷光さん、野村不動産コーポレートコミュニケーション部広報二課課長代理の徳長政輝さんが語りました。

DNA WALLで目指したこと

――DNA WALLを作ることになった理由・目的について教えてください。

水谷光さん(以下、水谷):新宿野村ビルに本社を構えていた当時は、野村不動産グループの歩みや歴史を体系的に俯瞰し、社外の方々にご説明できるようなアーカイブ機能を備えた空間は存在していませんでした。こうした背景を踏まえ、グループ8社が集約する新本社への移転を機に、グループの軌跡を可視化し、社内外の関係者と共有できる場を創出することについて、担当役員の山田(山田譲二/常務執行役員芝浦プロジェクト本部長兼グループオフィス戦略室担当/2026年3月16日現在)を中心にかねてより構想が練られてきました。

徳長政輝さん(以下、徳長):広報に対しても、社員から沿革や年表等がないかという問い合わせや、外部の方に見せられる会社紹介動画などがないので不便だという声もあって、課題に感じていました。

水谷:部署やグループ会社が異なると、互いの取り組みを十分に把握できていないことも多く、時にはお客様からの質問を通じて初めて知るようなケースもありました。グループ全体の競争力を高めていくうえでは、まず自社およびグループ各社の事業内容や取り組みを正しく理解することが重要であると感じていました。DNA WALLプロジェクトが始動したのは、2024年の夏頃だったと記憶しています。当初は、野村不動産グループの情報発信の場を作るという構想のもとにスタートしましたが、ハード面の設計やコンテンツといったソフト面をどのように構築していくかについては、まさに手探りの状態からの出発でした。

――そこからコンペを開催され、情報発信スペース構築のパートナー企業としてアマナが選ばれたわけですね。どのような役割を担当されたのでしょうか。

濱谷俊輔さん(以下、濱谷):私は、野村不動産グループの新本社移転プロジェクトに関わるアマナの窓口と、社内外への発信など、意識浸透施策全体のプロデュースをしています。その一環として、情報発信スペースの立ち上げと開発にもプロデューサーとして入ることになりました。

濱谷俊輔|Shunsuke Hamatani
アマナプロデュサー/プランナー
企業や自治体など幅広い業界・領域においてブランディング、プロモーションに関わるコミュニケーションプランやコンテンツ企画、および制作を担当。

長利琢磨さん(以下、長利):私は企画、コンセプトから体験設計、空間設計やディレクションなど、クリエイティブディレクション全般を担当しました。これまで、さまざまな企業においてイベントやショールーム、店舗施策などの空間デザインや体験設計を担ってきましたが、今回は野村不動産としても大きなプロジェクトですし、その中でもコミュニケーションのハブになるような場所を作るということで、自分の経験を総動員していい形を提供できるようにしなくてはと思っていました。

――当初はどのような情報発信スペースにしたいと考えていたのでしょうか。

水谷:グループ各社の社員が利用する場であることから、特定の会社に偏った内容ではなく、グループ全体を俯瞰できる構成とするようお願いしました。

長利:そのうえで、社員の皆さんに対して気づきを与えられるかがポイントでした。自分の担当事業しか話せないのではなくて、会社全体としてどういう取り組みをしていて、だからあの部署は今この動きをしているだということを知る、そういう気づきを得る場が共創のために必要だということでした。さまざまな事業が動いている中で優先順位を付けないでどう見せていくか、全員の共通解、共通項がどこなのかを探るのが難しく感じましたね。

長利琢磨|Takuma Nagatoshi
アマナ クリエイティブディレクター
展示会や店舗、ショールーム、イベントなど、企業・ブランドが行うフィジカルな体験を用いたプロモーションにおいて、体験設計から空間設計、コンテンツ制作などクリエイティブディレクション全般を担当。

水谷:空間自体がオープンな作りとなっているため、誰かがプレゼンテーションを行っている様子を目にする機会もあるかと思います。そうした場面を通じて、新たな気づきを得られることもあるはずです。そのため、発信する内容はもちろんのこと、空間そのものの設計も重視し、一定の人数が集まり、プレゼンテーションを行えるようなスペースを設けたいと考えていました。

蓄積された歴史が波紋のように広がる

――そうしたリクエストを受けて、どのようなコンセプトを設定したのでしょうか。

長利:これまで培ってきた歴史やノウハウを蓄えた場所で、新しい雫が波紋のように広がっていく。それが未来を作る源なのだという意味で、「Innovation Fountain」というコンセプトを考えました。雫の波紋が遠心的に周りに広がっていき、それが共創につながるような、コミュニケーションの場になるようにしましょうと。

濱谷:コンテンツ内容については、もともと「情報発信」がベースにあったので、グループ全体の情報を網羅することと、更新性があることを重視しました。ただのアーカイブではなく、現在進行系の新しいものもどんどん追加していけるような。そういったことを鑑みて、モニターの大きさや数、空間全体の開放感、誰かのプレゼンに偶然遭遇できる場作り、などを企画していきました。

水谷:構想の過程において、社長の松尾(松尾大作/野村不動産ホールディングス株式会社代表取締役副社長兼副社長執行役員グループCOO/2026年3月16日現在)から「迫力のある大画面でコンテンツを見せてはどうか」とのアドバイスがありました。そこから、当初は想定していなかった“壁(WALL)”という発想が生まれました。

長利:1つのコーナーを「ここはDNAを象徴する壁にしましょう」と提案していたのですが、その際の「DNA WALL」という言葉がそのままスペース全体の名前になったんですよね。
お客様の動線として、15階から14階に降りて来られた時の階段からの見え方にも気をつけました。大きな壁(モニター)が見えた時のファーストインプレッションを意識しつつ、視認性もあり、空間のオープンな雰囲気をさえぎらないようにするには、と検討を重ねました。

水谷:初期の検討段階では、模型などのアナログ要素とデジタルコンテンツをどの程度の割合で取り入れるかという議論もありました。しかし、将来的な更新のしやすさを考慮し、最終的にはすべてのコンテンツをデジタルで構成する方針となりました。

水谷光|Hikaru Mizutani
芝浦プロジェクト本部グループオフィス戦略室推進課課長
野村不動産グループのブルーフロント芝浦の新本社企画、及び移転全般を推進。移転後は、目指す働き方に向けた社員浸透、利用促進、及びオフィスの安定稼働に向けた業務に取り組んでいる。

――掲出されるコンテンツの内容を教えてください。

濱谷:メインの大きなモニターと、手元のタッチパネルで操作できるサブモニターとで、掲出されるコンテンツを分けています。
メインには年表を表示。野村不動産の創立から今まで、グループ全体を含む現在進行形の歩みが年代別で見られるようになっています。そのほかには、IR情報にひもづく野村不動産グループの売上推移や経営ビジョン、CMをはじめとした各種映像コンテンツなど、プレゼンテーションに使えるコンテンツがそろっています。
サブモニターでは、野村不動産グループの価値創造プロセス、各グループの事業内容、プレスリリースなどが見られるようになっていて、日々動く情報を自ら探して閲覧していただく設計です。

長利:DNA WALLの使い方として、プレゼンテーションポイントとして機能することも目的の1つ。プレゼンの際に必要な大きなモニターと、その他の情報をカバーする小さなモニター、という分類にしました。

――見せ方で工夫したポイントはありますか?

長利:メインモニターの待機画面は3種類あり、うち1種類はコンセプトの泉を想起させる波紋のイメージで作成しました。DNA WALLの周辺で作業をしている人にとってわずらわしさを感じず、とはいえ何もない画面だと場の流れが止まってしまうので、空間に変化をつける意味で幕間としてスクリーンゼロみたいな画面を作りたいなと思ったのです。興味をそそる動きを見せつつ、近寄って見ると実は意味のある文字列(野村不動産の歴史事項)という、興味喚起から情報へと連動させて、波紋が広がるイメージをビジュアライズしました。

長利:サブモニターを置く台は、DNAのらせん構造と、歴史が積み重なってきた積層をイメージしたもの。その配置については、会議用の長机や椅子を置いたり、メンバーで実際に立ってみたりして、さまざまな検証を行いました。また、DNA WALLでプレゼンをするのであれば、人が集まりやすく、はけやすい動線が確保できる配置間隔が必要で、実寸のモックアップを作って置き、常務執行役員の山田譲二さんにも協力していただき、より実際に近い環境を再現し配置の確定を目指しました。

濱谷:10名以上のグループでの来客も想定して、どのあたりに滞留してもらったらモニターが見やすいかなど、モックアップを複数制作して確度や素材・色を考えたり。掃除などメンテンナンスのしやすさや、車椅子の方にも使いやすいユニバーサルな設計になっているか、服の裾が引っかかったりしないかなど、さまざまなチェックをしましたね。

多様な思いを1つにまとめる挑戦

――DNA WALLの制作にあたり、大切にしたことは何でしょうか?

徳長:現在、グループ会社が20社を超えているため、情報が均等に発信できるようバランスに気をつけました。年表に掲載する項目をピックアップするために、60年以上にわたる出来事から必要な項目を取捨選択するのがなかなか難しくて。過去の周年史や、採用ホームページ、コーポレートサイト、統合レポートなど、いろいろな場所に情報が掲載されている中から、それらをすべて拾い上げ、キーとなる項目を抜き出し、調整していきました。年代ごとにトピックスとなる部分、たとえば会社設立やホールディングス体制への移行、「PROUD」など社外からの認知度が高いブランドは出すべきだろうとか、さまざまな観点で選びました。
古い項目になると写真がなかったり、あってもデータ化されていなかったりしたので、昔の冊子からスキャンしたり、ロゴデータを活用したり。各部門の企画室に確認して、いろいろと協力していただきました。

徳長政輝|Tokunaga Masateru
野村不動産 コーポレートコミュニケーション部広報二課課長代理
2019年キャリア入社。野村不動産法人営業本部(現:野村不動産ソリューションズ)にて法人仲介営業を経験後、人材開発部(現:人事・人材開発部)にて研修業務全般を担当。現在は、社内広報やイベント・制作物関連業務を担当。全グループ従業員へ経営発信や事業内容、そこで働くヒト、グループのイマを発信し、更なるグループシナジーの創出に取り組んでいる。

長利:役員の方をはじめ社員の皆さんの思いも多岐にわたり、その中でどこに集約するのがいいのか、どういう空間であるべきか、ずっと考えていました。ソフトが変わるとハードのあり方も変わるし、ハードの制約によってソフトの手直しも必要。全部が密接に関わっているので、それぞれを生かせるポイントがどこなのかを探り続けた印象があります。

濱谷:DNA WALLがある14階の来客エリアは、カフェやバーカウンターなど飲食関連はUDSさんが担当されていて、会議室やライブラリーなど導線上つながっている全体的な部分は日建設計さんが関わっている。そのほか、さまざまな建築事務所や設計施工関連の方々が携わっているプロジェクトの中で、アマナとしてのプランをどう調和させていくか、常に考えていました。関係各所、周囲の方々とコミュニケーションを取りながらの日々でしたが、情報発信という重要な部分のスペースをまかせていただいたということで、プレッシャーも大きかった分、ワクワクもしていました。関わる方が多かった分、学びも多く、とても貴重な経験でした。

長利:そうですね。どう共創を生み出すか、きっかけ作りを目指すべき場所として大きな役割を担うのでプレッシャーもありましたが、期待感も大きかったと思います。

社内外がCROSS-BORDERしながら育てる場に

――完成したDNA WALLに対して、社員の皆さんから何か反応はありましたか?

徳長:DNA WALLをよく観察しに行くのですが、お客様を案内して使われている人が多いなという印象があります。内覧ツアーみたいな形だけでなく、来客としていらっしゃった方にも気軽に使っていただいているようですね。社員が何気なく立ち寄って触っているのを見かけたりもするので、1つのコミュニケーションツールとして認知されていると感じました。

水谷:社員はもちろん、役員の方々がふと足を止めて年表や取り組みを確認している場面も、よく目にします。

徳長:そのせいか、役員の方から「こういう項目を入れたい」というリクエストをいただくことが増えました。すぐに更新できますし、やっぱりデジタルにしておいてよかったなと。

――今後、どのように活用していきたいとお考えでしょうか。

徳長:2回目、3回目に訪れたお客様に、新しいコンテンツをお見せできるといいですね。すでに格納されている情報を更新するのはもちろんですが、新たにコンテンツを考えるのか、それはどんな内容がふさわしいかなどは、これからの課題です。
それから、何かイベントをしてもいいかもしれません。グループ会社の野村不動産ライフ&スポーツと組んで「MEGALOS」流のエクササイズとか。情報発信とは違った観点で、空間としての使い方を考えていけたらと思います。
ほかにも、新卒やキャリア入社の社員への研修に使ってもらったり、ワークショップを開いたりできるかもしれません。社員の皆さんの意見も聞きたいですね。

水谷:新本社のコンセプト「CROSS-BORDER For Tomorrow」には、社内だけではなく、社外の方々とも連携しながら共創していくという想いが込められています。今回の移転によって、その共創を生むコミュニケーションの場が整ったと感じています。
チームで動くためには、会社の歴史や事業、未来について自分の言葉で語れることが重要だと思っています。同じ年表を見ても、人によって注目点や伝え方は異なるはず。その多様な視点こそが価値であり、今後、自分の言葉で語れる仲間が増えていくことは、グループ全体にとって大きな意義があると考えています。

濱谷:企業としてのDNAはこれからも紡いでいくものですし、更新されていくもの。設備としてはいったん完成しても、そこから一緒に育てていくスペースとしてこの空間を考えてくださっていたのはありがたかったですね。いろいろな人がCROSS-BORDERしながら、こういう使い方がいいね、こんなコンテンツがほしいね、そんな会話をしながらエイジングされていくといいなと思っています。

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