《植栽|DAISHIZEN/SOLSO》ウェルビーイングを実現するオフィスを目指して。緑あふれる空間作りのポイント。|ほぼ100のこばなし

グループオフィス戦略室 浦田伸彰さん
株式会社DAISHIZEN/SOLSO 増田晃さん 栗本はづきさん 棚橋風太さん

2025.09.01

《植栽|DAISHIZEN/SOLSO》
ウェルビーイングを実現する
オフィスを目指して。
緑あふれる空間作りのポイント。

INTRODUCTION

緊張した時間が続くオフィスにあって、花や草木など自然を感じられる植栽があるだけで、心が和んだり落ち着いた気分になったりすることはありませんか。そうした効果を鑑みて、新本社では豊かなグリーンを取り入れる植栽計画が進んでいます。

社員のエンゲージメント向上につながる植栽を叶えるために、どのようなポイントがあるのでしょうか。植栽計画を担う株式会社DAISHIZEN 取締役の増田晃さん、デザイナーの栗本はづきさん、棚橋風太さんと、野村不動産 グループオフィス戦略室 推進課 課長の浦田伸彰さんが語りました。

社員のエンゲージメントを向上させる植栽を目指して

――新本社に植栽を入れる理由を教えてください。

浦田伸彰さん(以下、浦田):弊社はウェルネスの推進を大命題として、従業員のエンゲージメントを向上させることに取り組んでいます。社内にグリーンを置くと社員のメンタリティに良い影響があるということは、浜松町のトライアルオフィスで体験してもらった結果からも明らかでした。新宿野村ビルではグリーンを置いていない部署もまだ多くあるせいか、トライアルオフィスを体験した社員からは、「植栽があると気分が良い」という声があがっていたのです。さらに弊社はWELL認証の取得を目指しており、オフィスの什器類やアートなどと並んでグリーンも重要なファクターになっています。社員の気分転換や自由な発想、活発な意見交流が生まれることを期待して、植栽にも力を入れました。

――植栽を担当されるパートナーはDAISHIZENの「SOLSO(https://solso.jp/)」ですね。

浦田:新本社では植栽に限らずいろいろな職種の企業にパートナーとして入っていただいています。植栽については2023年夏に提案型プロポーザルを実施して、それを経てSOLSOさんにお願いすることになりました。

増田晃さん(以下、増田):決定後に、浦田さんには「フォレストゲート代官山(https://forestgate-daikanyama.jp/)」という弊社が手がけた施設をご案内しました。そこはランドスケープや商業施設内の植栽も含め、サーキュラーエコノミーと言われる循環型の施設にするためのすべてのディレクションをDAISHIZENが担っていて、弊社を知っていただく良い機会になると考え実際に見ていただいたのです。

増田晃|Akira Masuda
DAISHIZEN/SOLSO 取締役
DAISHIZEN設立1年後の2012年に入社。植栽デザイン・施工・メンテナンス、店舗運営等幅広く経験。現在はGREENSCAPEという都市緑化の事業部の統括を担っており、商業施設やオフィス、ホテルなど幅広い分野の植栽ディレクションを手がける。

浦田:あらためてSOLSOさんの取り組み方を見て、オフィスという環境で草木や土に触れるのはすごくいいなと思いました。

――新本社における植栽のコンセプトは何でしょうか。

増田:執務エリアのコンセプトは「Well Soil(良い土壌)」。良い土がないと植物は成長できません。同様に、働く人たちが健康的で快適に仕事ができる土壌(オフィス環境)を作りたいと考えました。来客エリアは「New Nature(新自然)」というコンセプト。執務エリアの良い土壌で成長して、そこからさらに枝葉を広げていけるようにという思いからです。新本社にはいろいろな拠点からグループ各社が集まってくると伺っています。この土地に根ざして、野村不動産さんのまだ見ぬ未来の景色を想像して体験していくような場所にしていきたいですし、社員の方はもちろん、来訪される方も含めて、ここにしかない野村不動産さんならではの新しい自然を作りたいと思って計画しました。

浦田:新本社は1フロアが約1,500坪と、かなりの広さです。来客エリアと執務エリアが同じようなテイストだと飽きてしまいそうですが、それぞれのエリアで違いをつけて提案していただき、さらにポイントごとにテーマを設定して作り込んでくれました。インテリアと相まって植栽が良い雰囲気を作ってくれて、社員もお客様も退屈しない環境になっています。時間帯によって照明の色や光度が変わっていくので、植栽もいつ来ても違う表情を見せるというところを狙いたいと考えていました。

社員やお客様を飽きさせない、工夫と仕掛け

――各エリアについて、植栽のテーマやポイントを教えてください。

■15階エントランス(受付、ラウンジ)

栗本はづきさん(以下、栗本):エントランスにある花器には、季節の変化を感じていただけるよう旬の花や枝物を生けております。受付から奥に歩いていくと、左官アートが印象的なラウンジがあります。アートを引き立てながらも海へと続くアプローチの眺望を妨げないように、植栽は控えめかつ効果的に配置しています。

栗本はづき|Hazuki Kurimoto
DAISHIZEN/GREEN SCAPE ARCH DESIGN デザイナー 建築・インテリアの学校を卒業後、2021年に入社。さまざまな業種の店舗やオフィス、イベント空間など幅広い分野の植栽デザインを担当。植栽だけでなくインテリアスタイリングも行う。

増田:インテリアを考えるのはもちろんですが、ランドスケープも考慮したのがポイント。このビルがある立地と周辺環境を考えた時に、近くに海があって反対側は街がある。その条件を鑑みて、海への抜け感を出すために植物の丈を低めにして、逆サイドの街側は風景に溶け込ませるような植栽に。周辺の環境に合わせたランドスケープの観点で、植栽をプランニングしました。

エントランスの花活け。この日は大輪のアジサイがエントランスを彩っていました。

■15階Villa

栗本:Villaは葉の色や形などで視覚的に変化を感じられる植栽にしました。Villaエリアの奥に行くにつれて空間のトーンが濃くなっていく設計に合わせ、植物の葉の色味もだんだんと濃いものに変化していくようにグラデーションをつけました。植物だけでなくプランターやカバーリングも変化をつけることで、変化を効果的に感じられるようになっています。

増田:歩いていくと少しずつ植栽の雰囲気が変わってきたなと感じられるようにしました。極端に変えると違和感が出てしまうので、緩やかなグラデーションで変化がつくようにしたのです。

浦田:上からハンギングしている植栽もあって、そうすると目線に変化が出て、お客様も退屈しないのではと。

Villaの中のアプローチ。

■14階ライブラリー

栗本:ライブラリーは資料を閲覧する空間で、どうしても閉鎖的な印象になりやすいため、少しでも和やかさを感じられるよう屋外の雰囲気を想起させる植栽を取り入れました。たとえばベンジャミンやシルクジャスミンのような、小さめな葉の品種を選定しています。

増田:ライブラリーのあたりは床材が石のように見えて、会議室側は下のマテリアルが屋外のようです。そのため、屋外で使うような植物やプランターをあえてチョイスして、錯覚で屋内にいるけど屋外にいるような感覚になる植栽にしました。

■14階カフェエリア

栗本:カフェエリアは、全体のインテリアと調和するよう、カバーリングもテラコッタ系を選定しました。他のエリアよりもグリーンを多めにし、ゆったりと落ち着いて休憩できる空間作りを心がけました。

増田:飲食をする場所なのでリラックスできるのは大前提で、さらに多肉植物など執務エリアとは違う要素を入れてコミュニケーションがはずむような植栽にしたいなと思いました。あとは、緩やかに視線を区切ること。壁やパーティーションなどで完全に空間を区切ってしまうのではなく、グリーンの向こう側に人の気配を感じるくらいの緩やかさにしておくことで、空間全体はなんとなくつながりつつ適度なプライベートエリアを確保できて、それが心地良いと感じていただけるかなと。

栗本:カフェはライブラリーとつながっているので、空間のつながりを意識してカフェ周りにも小さめな葉の品種を入れています。

■14階カフェエリア・エディブルコーナー

棚橋風太さん(以下、棚橋):カフェエリアにはエディブルコーナーがあって、バジルやローズマリーのようなハーブ類を入れています。食事をする時にご自身でそこからハーブをつまんで料理に添えたりしてもいいですし、カフェを使わなくても香りを楽しんでリフレッシュした気持ちで仕事に戻ったり、そうした体験の場がオフィスの中にあったらいいのではと考えました。コーナーには剪定バサミや霧吹き、ハーブにまつわる本などもディスプレイしているので、社員の皆さんで自由に使っていただけるとうれしいです。イチゴやブルーベリー、もしかしたら実はならないかもしれませんがコーヒーやパイナップルといった食にまつわる植物も入れて、普段食べているものがどう育ち、できていくのかを知るきっかけになればと期待しています。

棚橋 風太|Futa Tanahashi
DAISHIZEN/GREEN SCAPE ARCH DESIGN デザイナー 建築設計事務所を経て、2022年に入社。商業施設やオフィス、ホテルなどを中心に幅広い分野の植栽設計・デザインを担当。設計事務所での経験を活かした植栽周辺の設計も行う。
カフェエリアに隣接された、エディブルコーナー。

■11~13階執務エリア

棚橋:来客エリアはインパクトのある植栽にしていますが、執務エリアはとにかく広いし実務をする場所でもあるので、要所要所で緑を感じられるように計画しています。テーブルやキャビネットの位置を意識して、緑が自然に目に入ってくるように配置。窓側にはハンギング、キャビネットの上にも植栽を入れて、どこにいても緑を感じられるようにしました。

執務エリアの各フロアには中階段が4カ所ありますが、そこは人が上下に移動して交差しながら集まる場所でもあるので、緑のコアを設けることにしました。海側にあるコアは「水の森」がテーマ。水の要素を入れた植栽にしたく、カバーリングとして川石(水で削られた丸みを帯びた石)を入れたり、水を感じるようなガラスブロックを入れたり。さらにみずみずしさを感じられるように葉が肉厚で潤いを感じられる植物を入れています。

街に向いた側は「光の森」がテーマ。光が落ちてきて木漏れ日ができるようなイメージで配置しました。反射光を想起させるように、鏡面なども仕込んでいます。また、執務エリアでの重要なファクターがUZU家具(※小堀哲夫さんの記事リンクを入れても)です。UZU家具には緑が一体化して見えるように配置しました。家具が変化したら植栽も変化できるようにしています。さらに、人を感じながら仕切りもあるように見せたいというリクエストにお応えして、ハンギングも取り入れました。

浦田:カフェエリアと同じで、緩やかに目隠し、仕切りをしたいと思ったのです。壁を立ててしまうと閉鎖的すぎるし、かといって何も仕切りがないと仕事に集中できないのではと。適度に心地よく仕切りたいと思って、グリーンの力をお借りしました。

浦田伸彰|Nobuaki Urata
野村不動産 グループオフィス戦略室 推進課 課長 部門を跨いでオフィスビルに関する経歴が最も長く、都市開発事業本部のビルディング事業部や投資顧問のマスターファンド投資法人、私募ファンド部門で主にオフィスビルを中心に物件の運営やリーシング、PM、AM、取得物件のデューデリジェンス等を経験。新宿野村ビルは運営、AMの両方で担当し、今回のBLUE FRONT SHIBAURA TOWERSのオフィス戦略と、野村不動産の本社には全て運営関連で関わっている。

植栽から得られるウェルネスな時間

――植栽が入るとオフィスの印象がかなり変わりますね。

浦田:来客エリアのエントランスの花活けを見て、季節感というコンセプトが効いていてとてもいいなと思いました。生の花や草木にこだわったことで、立体感や奥行き感、みずみずしさを強烈に感じましたね。実に多くの種類、見たことのない植物が入っていたりするので、「これってフェイクかな?」とみんなが触りますし、そうやって触れ合っていると植物に愛着が湧いてきます。すでに鉢植えに向かって「この子」って呼び始めていますから(笑)。「この子はもっと光が当たるように向きをかえようか」と私たちの間でそういう会話が発生していて、それが今後、社員どうしの雑談になったりコミュニケーションのきっかけになったりするといいですよね。

増田:インテリアや空間デザインに合わせて植栽計画を練るのは当然ですが、その場所を使う人がどう使うか、どう感じるかに重点を置くようにしています。社員の方にとってはオフィスの中にいる時間が一日の大半を占めることになるので、それぞれの貴重な時間が植物の効果で充実したものになってくれればうれしいです。リラックスできて仕事もはかどって、エディブルコーナーで何かを体験したり、植物には二次元バーコードを付けているのでそこから発見や驚きを得てインスピレーションにつながったり、植栽から得られるウェルネスな生活を実感していただければ。

SOLSOからは御社専属のキープグリーンチームが今後もずっとメンテナンスをしていきますし、社員の方に話しかけていただいて心地良い関係性を築けたらと思います。そうしたすべてが、心身の健康につながるといいですね。

――新本社に植栽があることの意義についてどのようにお考えでしょうか。

浦田:オフィスは働く場所なので、いちばん大切なのは従業員やお客様、つまり人間です。植栽もアートも設計も、人間を立てる脇役という位置づけではありますが、それがなければ場が成り立ちません。脇役としての位置をうまくキープしながら今後も良い感じのバランスを保っていければと思っています。

増田:植物、空間、人間のバランスがとれていないと良い空間、良い場所とは言えないと思います。SOLSOとして植物の良いバランス感を維持し続けるのが自分たちの役割であり、重要な部分を担っていると気持ちを引き締めています。

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