グループオフィス戦略室推進課 橋本葉子さん
UDS株式会社 伊東圭一さん 岡田遼さん
2025.06.18
《カフェ設計|UDS》
自然なコミュニケーションを生み出す、
カフェエリアの空間設計
INTRODUCTION
新本社の14階、共創エリアと言われるフロアには、カフェエリアが設けられます。その空間は、単に飲食ができるだけではなく、社員同士、そして社外の方々とのコミュニケーションが生まれる場所としての設計がなされています。イベントの開催なども見据えており、常に人が集まり、賑わう場になることでしょう。 今回は、カフェエリアの設計を担当したUDS株式会社の執行役員・伊東圭一さんと、マネージャーの岡田遼さん、野村不動産 グループオフィス戦略室 推進課長の橋本葉子さんが鼎談。コミュニケーションを生むための空間設計は、どのように進められたのでしょうか。 プロジェクトに携わっている企業同士ですでに思いがけない交流が始まっているという、カフェエリアの設計意図について語っていただきました。
賑わいが生まれる「港町」を目指して
――カフェエリアはどのようなコンセプトで設計されたのでしょうか。
岡田遼さん(以下、岡田): コンセプトは「Port Town」です。移転先の芝浦は海が近く、また社員同士や社外の方々が交わり合い、ハブのように機能する空間を目指すということで、さまざまな人が行き交う港町をテーマにしました。
野村不動産さんからは、コミュニケーションが取りやすい空間にしてほしいというリクエストがありました。そこで、食事をしやすいだけでなく、ソロワーク向けの席や複数名での打ち合わせ用の席など、多様な飲食シーンと働き方に合わせたスペースを考え、賑わいが生まれる空間を表現しています。
大学院で建築工学を学び、現在では、インテリアデザイン主軸にホテル、飲食店、オフィス空間の設計に従事。大学院の頃、設計したものが、どのように運用されて行くのか、という部分に興味を持ち、企画設計運営を行なっているUDSに出会い、2017年に入社。
実績:MUJI HOTEL GINZA , GRANDE GATE HIROSHIMA ,(tefu)lounge, etc.
橋本葉子さん(以下、橋本): 新本社にカフェを入れることは最初から決めていました。社員のお腹を満たすだけの場所ではなく、時には社外の方も訪れることができて、そこにコミュニケーションが自然発生することは必達にしたいと思っていたので、人が集まる空間作りのプロに設計をお願いしようと。実績やご提案内容もさることながら、「新本社で実現したい私たちの思いに寄り添って考えてくださるか」という観点で、UDSさんにぜひご協力いただきたいとお願いました。
――コミュニケーションが生まれる空間にするために、どのように設計を進めていったのですか?
岡田: 約50年ぶりに自社のオフィスを移転するというのは、とても大きなイベントですよね。私が考えていたのは、「本当にいたくなる場所ってどんな場所だろう?」ということでした。橋本さんにも、コミュニケーションだけでなく「イベントを開催できる場所にしたい」など、社員の方々に寄り添いながら考えるためのキーワードをいくつかいただいたので、そこからさらにアイデアを深めていきました。
伊東圭一さん(以下、伊東): 当社はシェアオフィスや飲食店、ホテルを運営しているので、どういう場所でどういう人が行動・滞在するかを考えながら空間をゾーニングすることに慣れています。今回も、人の動きや流れを想像しながらレイアウトを考え、UDSらしい表現をしていきました。どんな空間を設計するにしても、その空間がどのように使われるのかを想像することは大切にしていて、そのために時間をかけてリサーチしています。
また、飲食事業の経験から、食堂の場合は食事の時間帯以外に利用されにくいことがわかっていました。今回のカフェエリアではこの点も意識し、さまざまなタイプの席を作ることでどの時間帯でも人が集まるように工夫しました。社員の皆さんや、来客された方たちに、思い思いに使っていただけるといいのですが。
大学院修了後、主に商空間のインテリア設計に従事。その後、約2年間香港にてインテリアの設計施工会社に勤務。これからの時代、幅広い多角的な視点が必要であると考え、企画/設計/運営の三位一体で仕組みやものづくりを行っているUDSに入社。
実績:MUJI HOTEL GINZA , EATALY GINZA ,Noie Hakone Sengokuhara, etc.
人が自然に集まる空間作りの工夫と試行錯誤
――カフェエリアの席の配置はどのように考えたのですか?
岡田: 窓側は、景色が抜ける方向を意識して落ち着いて過ごせる席にしたり、入口に近い側は気軽に入ってきてすぐ使えるように1人席を多くしたりと、エリアごとにどのような席が良いのかを検討して配置しました。
伊東: 厨房とレジの関係性や、ハイカウンターの位置などは、人の流れも考慮して決めています。また、カフェエリアでイベントが開催される場合には、参加していない人であっても遠目からイベントの様子が見えるようにして、「あそこで何か楽しげなことをしている」と人が集まってきたり、そこで偶然のコミュニケーションが生まれたりする余地も想像しながらレイアウトしていますね。
岡田: イスなどの一部を除いて、カフェエリア用のオリジナル造作家具をたくさん作りました。上品かつ活発なイメージを大切にしつつ、板の厚みやクッションの柄などを考え、快適に過ごせるようにしています。
――さまざまなこだわりが詰まっていますね。設計する中で、難しい点はありましたか?
伊東: 使用するタイルの色を決める時でしょうか。海辺のキラキラ感から発想してツヤ感のあるエンジ色の三角タイルを選んだのですが、CGだけでは伝わりきらない部分があって。
橋本: あのエンジ色のタイル、とても素敵ですよね。社内からさまざまな意見が出てきて、決めるまでに時間がかかってしまいましたが、実物を見ていない状態で納得してもらうのは難しいこともあるなと感じました。
野村不動産 グループオフィス戦略室 推進課長 住宅(営業推進)、人事(ダイバーシティ推進担当)、都市開発(ビル営業・プロモーション)に在籍した後、2022年にグループオフィス戦略室へ異動。「組織を越えて繋がりの輪が広がり、組織間連携や事業協力が活性化するオフィス」を目指して本社移転PJに取り組んでいる。
岡田: 技術的に大変だったのは、もともとこのエリアに厨房を置くことが想定されていなかったことです。レストランとして作られたフロアではありませんしね。どれだけ機材を置けるのか、できるだけ床を上げることなくカフェスタッフとお客様がフラットに接することができるようにするにはどうすればいいかなど、頭を悩ませるポイントが多かったですね。
カフェエリアは設計だけでなく運営も当社が行うことになっていますので、運営担当とも相談しながら、容量が大きくなる火口のコンロをなるべく置かずに電気系を使うなど、工夫を重ねることで解決しました。その条件を踏まえて提供するメニューなども決めていったので、設計から運営までUDSがトータルで担当するメリットが出たのではないかと思います。
「なんとなく」つながっている、絶妙な距離感を実現
――カフェエリアをどのように使ってほしいか、具体的なイメージはありますか?
岡田: 同じ会社に勤めていても、あまり話したことのない間柄の人は多数います。でもカフェエリアで出会うことで「他の部署はこんな仕事をしているんだな」と知ることができるような、新たなコミュニケーションが生まれる空間になればと期待しています。それは空間ありきというよりも、運営がポイント。どのようなイベントや企画を打ち出していくのか、運営に携わるUDSのスタッフや野村不動産の皆さんとも話し合いながら考えていきたいですね。
伊東: コミュニケーションが生まれやすいように、カフェエリアのレイアウトは距離感を大切にしています。オフィス機能だけだと「ただ作業するだけの場所」になってしまうし、カフェ機能を優先するとリラックス感が強くなってしまいます。近くの席にいる人が何をやっているのか、なんとなく知ることができるパーソナルスペースが必要で、その適度な距離感によって思わず話しかけたくなるような空間になればと思っています。
橋本: オフィスは働くための場所ですが、行きたくなる場所になったらいいなと思うんです。「行かなければ」ではなく、「行きたい」にしたい。おいしい食があって、オフィス内のカフェだからこそ感じられる空気感があって、そこに知り合いがいたら話しかけてみる。そういう自然なコミュニケーションが生まれる場所が増えたら、もっと豊かなオフィスになるはずです。
岡田: そのためにも、なんとなくつながっている感覚になれるような空間作りが大事だと思っていました。仕切りすぎると空間が分断されてしまうし、かといって互いの距離が近すぎても過ごしにくい。感じ方は人それぞれかもしれませんが、ちょうど良い距離感が実現できるように植栽担当のパートナーとも連携しながら、エリア全体で工夫しています。
――「なんとなく」という感覚的なことを形にするのはなかなか難しそうですね。
伊東: 当社としては、「なんとなく」を示すのに、シェアオフィス等の運営を通して得てきた感覚があります。その感覚をいかに伝え、形にできるか、というのが今回に限らずいつも難しいところでですが、橋本さんや野村不動産の皆さんとの打ち合わせを繰り返し、共に作り上げていく気持ちで進めています。
橋本: この空間だったら人が集まるだろうと納得できたからこそ、ご一緒しているわけです。そして今回は、デザインだけではなく運営までサポートしていただけることがとても大きいですね。設計していただいた空間でどういう空気を生んでいくか、一緒に考えていただけるのがわくわくします。
岡田: 今回、他のエリアを担当している企業さんと飲み会をしたりと、コミュニケーションを取る機会が多いんです。これまでは、同じ施設の施工に携わっていても同業他社とはあまり話すことがなかったのですが、「BLUE FRONT SHIBAURA(芝浦プロジェクト)」では今までにない交流が起こっています。
橋本: このプロジェクトに携わってくださる企業さん達は、全体的に仲が良いんですよ。
――すでに「UZU(渦)」のシナジー効果が巻き起こっているんですね。
伊東: オープン前からこの空間を介した交流がちゃんと生まれているわけですから、カフェとしての豊かさが社外とのコミュニケーションも含めて期待できますね。オープン後もきっとそうなるのではないかと思いますし、実際にそうなればいいなと願っています。